2026年10月26日

腟や外陰部のひきつれ感、性交痛にお悩みではありませんか?
更年期以降、次のような症状を感じることはありませんか?
- 外陰部や腟の入口がヒリヒリする、つっぱる
- 腟の中が乾燥し、ひきつれるような感覚がある
- 性交時に腟の入口が痛む
- 以前は痛くなかったのに、性交痛を感じるようになった
- 下着が擦れるだけでも不快感がある
こうした症状の原因の一つに、GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)があります。
GSMとは? なぜひきつれ感や性交痛が起こるのでしょうか
閉経前後から女性ホルモン(エストロゲン)が減少すると、外陰部や腟の粘膜にも変化が生じます。腟の粘膜が薄くなり、潤いや伸縮性が低下することで、摩擦や刺激を受けやすくなります。その結果、外陰部や腟のひきつれ感、ヒリヒリ感、性交痛などが起こりやすくなります。
GSMは単なる潤い不足ではなく、女性ホルモンの減少によって粘膜や周囲の組織が変化することで生じる状態です。[1]
GSMでは、こうした症状に加えて、頻尿、尿意切迫感、繰り返す尿路感染症などがみられることもあります。
GSMについて詳しく知りたい方へ
以前の院長ブログでは、GSMの症状やセルフチェック、さまざまな治療方法について詳しく解説しています。
関連記事:膣の乾燥・かゆみ・尿漏れ…それは、GSMかもしれません
今回は、GSMに伴う腟や外陰部のひきつれ感、性交痛などに対して研究が行われている「モナリザタッチ」について、詳しくご紹介します。
モナリザタッチとは? 顔のレーザー治療技術を腟・外陰部に応用した治療
フラクショナルCO₂レーザーは、顔のニキビ痕や皮膚の凹凸などの治療にも使用されている技術です。レーザーを微細な点状に照射し、組織に熱刺激を加えることで修復反応を促します。顔のニキビ痕に対しては、複数の臨床研究で改善効果が報告されています。Liuら(2024年)のメタ解析でも、フラクショナルCO₂レーザーの有効性が検討されています[2]。
モナリザタッチは、このフラクショナルCO₂レーザーの技術を腟・外陰部の治療に応用したものです。
当院では、イタリアDEKA社製の「SmartXide Touch(スマートサイド・タッチ)」を使用しています。腟や外陰部の組織に微細な熱刺激を加え、修復反応を促すことで、GSMに伴う乾燥感やひきつれ感、性交痛などの症状軽減を目指します。ただし、顔の皮膚で確認された効果が、そのまま腟粘膜への効果を保証するものではありません。
レーザー照射後に腟粘膜の組織変化が認められています
Zerbinatiら(2015年)は、閉経後の萎縮した腟粘膜にフラクショナルCO₂レーザーを照射し、その組織変化を顕微鏡で調べました[3]。
その結果、照射後の組織に以下のような変化が報告されています。
- 薄くなっていた腟粘膜の上皮が厚くなる
- 上皮細胞の成熟が認められる
- 粘膜を支える結合組織に変化が認められる
これらの所見は、レーザーによる熱刺激が、萎縮した腟粘膜の組織に変化をもたらす可能性を示しています。組織の変化が必ずしも症状改善につながるとは限らず、臨床的な効果については引き続き検証が必要です。
モナリザタッチに関する医学的研究について
フラクショナルCO₂レーザーによるGSMの治療については、2010年代から10年以上にわたり研究が行われてきました。
腟粘膜の組織変化を調べた研究に加え、性交痛や乾燥感などの症状改善を評価した臨床試験や、複数の研究結果を統合したメタ解析も発表されています。
① モナリザタッチを用いた77人の臨床研究(2015年)
Salvatoreらは、閉経後の女性77人を対象にモナリザタッチによる治療を行い、治療前後の症状を比較しました[4]。治療後12週間の評価では、性交痛、腟乾燥感、灼熱感などの症状が治療前より改善し、性機能に関する評価でも改善が報告されました。ただし、この研究には偽照射などの比較対照群がありません。
② 複数の臨床研究をまとめたメタ解析(2024年)
Pessoaらは、GSMに対するレーザー治療のランダム化比較試験12件を対象にメタ解析を行いました[5]。その結果、CO₂レーザー治療群では、腟の状態を評価する指標や、性交痛、乾燥感、灼熱感などの症状について改善が報告されました。一方で、研究結果にはばらつきがあり、エビデンスの確実性には限界があります。
③ 2025年のメタ解析でも短期的な改善を報告
Vizán-Chaguacedaら(2025年)は、医学誌「Obstetrics & Gynecology」に、GSMに対するフラクショナルCO₂レーザーの有効性を検討したメタ解析を発表しました[6]。
この研究では11件の比較試験が解析され、レーザー治療群において、性交時の痛みや性機能、排尿症状に短期的な改善が報告されました。
複数の臨床研究をまとめた解析でも、性交痛などの症状改善の可能性が示されている点は注目されます。ただし、腟粘膜の状態を評価した指標では明確な優位性が確認されず、症状改善の程度が患者さんにとってどれほど意味のある変化なのかについても、結論は出ていません。
研究が進む一方で、今後の検証も必要です
モナリザタッチに用いられるフラクショナルCO₂レーザーには、組織学的研究、ランダム化比較試験、メタ解析など、さまざまな医学的研究が蓄積されています。一方、レーザーを照射しない偽治療と比較した試験では、明確な上乗せ効果が示されなかった研究もあります[7]。
2025年の米国AUA/SUFU/AUGSガイドラインでも、GSMに対するレーザー治療の有効性は確立しておらず、研究段階の治療と位置づけられています[1]。
症状改善の可能性を示す研究結果はありますが、有効性や長期的な安全性には未解明な点もあります。当院では、こうした医学的根拠とその限界を踏まえ、治療について説明しています。
GSMには局所エストロゲン療法という治療選択肢もあります
GSMの治療には、保湿剤や潤滑剤、局所エストロゲン(女性ホルモンの一種)療法などがあります。(腟内に女性ホルモンの薬を投与する方法です。)
局所エストロゲン療法は、女性ホルモンを含む腟錠を使用し、萎縮した腟粘膜の状態を改善する治療です。腟乾燥感や性交痛に対しては、多くの臨床研究があり、医学的根拠が豊富な治療方法です[1]。低用量の局所エストロゲン療法は、一般に内服薬や貼り薬などの全身投与に比べて、血液中へのホルモン移行が少ないとされています。ただし、その程度は薬剤の種類や用量によって異なります。
局所エストロゲン療法にも注意点があります
低用量腟エストロゲン療法について、これまでの研究では子宮内膜がんの発症リスク増加は明確に示されていません。一方、北米閉経学会(NAMS)の2020年の声明では、1年を超えるランダム化臨床試験による子宮内膜の安全性データが不足していることが指摘されています[8]。
これは、1年を超えて使用すると危険という意味ではなく、長期間使用した場合の安全性について引き続き検討が必要ということです。
また、乳がんや子宮内膜がんなど、女性ホルモンの影響を受ける悪性腫瘍がある方には使用できない場合があります。乳がんの既往がある方についても慎重な判断が必要です。日本で使用する薬剤の添付文書や、乳がんの治療内容などを踏まえて判断します。海外では、乳がんの治療歴がある方でも、一部の低用量腟エストロゲン製剤について、専門医と相談しながら使用を検討する場合があります[1、9]。局所エストロゲン療法は有効性が確認されている治療ですが、すべての患者さんに適しているわけではありません。なお、モナリザタッチが局所エストロゲン療法よりも安全であることが証明されているわけではありません。
それぞれの治療の特徴、既往歴、ご本人の希望を踏まえて選択することが大切です。
当院でのモナリザタッチの治療について
1か月程度の間隔で3回の施術を一つの目安としています
モナリザタッチの初期の臨床研究では、約1か月間隔で3回のレーザー照射を行い、症状の変化が評価されています[4、10]。
当院でも、約1か月間隔で3回の施術を一つの目安としてご案内しています。
ただし、すべての方に3回の施術が必要というわけではなく、3回の施術で必ず症状が改善するというものでもありません。施術後の経過や症状、ご本人の希望を確認しながら、治療を継続するかどうかを判断します。
当院では初回から3回分をまとめてお支払いいただく必要はありません
モナリザタッチは複数回の施術を検討することがある治療ですが、当院では1回ごとの都度払いとしています。
初回から3回分をまとめてお支払いいただく必要はありません。
初回施術から半年以内に3回目まで完了した場合には、3回目の料金を調整する仕組みとしています。
モナリザタッチ料金表(税込)
同じ施術範囲で3回受けた場合
| 施術範囲 | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 3回合計 |
|---|---|---|---|---|
| 腟内のみ | 33,000円 | 33,000円 | 22,000円 | 88,000円 |
| 腟内+外陰部 | 55,000円 | 55,000円 | 22,000円 | 132,000円 |
途中で施術範囲を変更した場合
施術範囲を途中で変更した場合は、3回目の通常料金から11,000円(税込)を割引します。
| 3回目の施術内容 | 通常料金 | 3回目の料金 |
|---|---|---|
| 腟内のみ | 33,000円 | 22,000円 |
| 腟内+外陰部 | 55,000円 | 44,000円 |
※料金はすべて税込です。
※3回目の料金調整は、初回施術から半年以内に3回目まで完了した場合に適用します。
※1回または2回で施術を終了することも可能です。
※施術内容や回数は診察のうえ個別に判断します。
※上記施術料金には、診察料・麻酔・施術後の処方薬が含まれています。初回相談時の検査などには別途費用が発生する場合があります。
※外陰部照射で事前のシェービングが行われていない場合は、別途トリミング。シェービング代3,300円(税込)が必要です。
※自由診療(保険適用外)です。
治療を継続するかどうかは、毎回の経過を確認しながらご相談いただけます。
モナリザタッチの副作用・注意点
施術時や施術後に、痛み、熱感、赤み、腫れ、少量の出血、分泌物の増加などが起こる可能性があります。
まれに熱傷、瘢痕形成、感染、痛みの持続などが生じる可能性もあります。
効果には個人差があり、十分な改善が得られない場合もあります。また、長期的な有効性や安全性については引き続き研究が必要です。
外陰部や腟の不快感は、婦人科にご相談ください
外陰部や腟のひきつれ感、性交痛などは、人に相談しづらい症状かもしれません。
しかし、GSMによる粘膜の変化が原因となっている場合もあり、症状や原因に応じた治療方法があります。
モナリザタッチも、そのような症状に対して研究が行われている治療選択肢の一つです。
「年齢のせいだから仕方がない」と我慢せず、まずはご自身の状態を知ることから始めてみませんか。
当院では、GSMを含めた更年期以降の腟や外陰部の症状について診察し、保険診療・自由診療それぞれの治療選択肢をご説明しています。
参考文献
[1]AUA/SUFU/AUGS. Genitourinary Syndrome of Menopause Guideline. 2025.
ガイドラインを読む
[2]Liu F, et al. Efficacy and safety of CO₂ fractional laser versus Er:YAG fractional laser in the treatment of atrophic acne scar: A meta-analysis and systematic review. Journal of Cosmetic Dermatology. 2024;23:2768–2778.
PubMed
[3]Zerbinati N, et al. Microscopic and ultrastructural modifications of postmenopausal atrophic vaginal mucosa after fractional carbon dioxide laser treatment. Lasers Med Sci. 2015;30:429–436.
PubMed
[4]Salvatore S, et al. Sexual function after fractional microablative CO₂ laser in women with vulvovaginal atrophy. Climacteric. 2015;18:219–225.
PubMed
[5]Pessoa LLMN, et al. Laser therapy for genitourinary syndrome of menopause: systematic review and meta-analysis of randomized controlled trial. Rev Bras Ginecol Obstet. 2024.
PubMed
[6]Vizán-Chaguaceda R, et al. Efficacy of Fractionated Carbon Dioxide Laser for the Treatment of Genitourinary Syndrome of Menopause: A Systematic Review and Meta-analysis. Obstet Gynecol. 2025;145:475–485.
PubMed
[7]Li FG, et al. Effect of Fractional Carbon Dioxide Laser vs Sham Treatment on Symptom Severity in Women With Postmenopausal Vaginal Symptoms. JAMA. 2021;326:1381–1389.
PubMed
[8]The North American Menopause Society. The 2020 genitourinary syndrome of menopause position statement. Menopause. 2020.
PubMed
[9]ACOG. Treatment of Urogenital Symptoms in Individuals With a History of Estrogen-dependent Breast Cancer. Clinical Consensus. 2021.
ACOG資料
[10]Salvatore S, et al. A 12-week treatment with fractional CO₂ laser for vulvovaginal atrophy: a pilot study. Climacteric. 2014.
PubMed