漢方処方
漢方処方
最近は薬局でたくさんの漢方薬品が並んでおり、目にしたことがある方、飲んでみたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
漢方治療は、主に漢方薬を使用して、様々な症状や病気を治療する診療科です。漢方医学は、西洋医学と異なる診断や治療の枠組みを持っているために、通常の血液検査や画像検査で診断がつかなかったり、現代医学の治療だけでは改善しにくかったりする症状でも、漢方薬のアプローチで奏功することが少なくありません。また、漢方治療はゆっくりとした効き目、というイメージもありますが、鎮痛薬のようにその症状をさっと取り除くような治療もできます。その上で、なぜその症状が起こっているが深く掘り下げていくと別のところに問題がある場合もあり、そこを治療することで体全体のバランスが良くなることがあります。その治療こそが漢方治療の本質ともいえるところかと思います。
心身のバランスの乱れが病気に発展していくという「未病」の考え方があり、この未病の段階で生活習慣の改善や漢方治療を行い、病気を回避していくという予防医学の側面もあります。
また婦人科の症状は漢方薬治療で大きく改善されるケースも少なくありません。更年期やめまい、月経痛やPMSといった疾患から冷え性やむくみといった未病までかなり広い範囲を漢方薬で治療可能です。漢方薬の効果というものは、即効性のある西洋医学の薬とは異なり、ゆっくりと普段の生活に取り入れつつ、根本の体質にアプロ―チして原因を取り除いていく方法です。効果を感じるまで時間がかかるものもありますが、即効性のあるものもあります。
漢方薬は200を超える種類があり、患者様それぞれの症状や体質に合わせて一人ひとり処方を行っていくため知識が必要です。
漢方は様々な不定愁訴(ふていしゅうそ)を含め、次のような代表的な婦人科でよくみられる症状に効果があります。
これはほんの一例です。
漢方は薬の名前もちょっと難しく、同じ効能でたくさん薬があったり、自分の困っている症状が、処方された薬の効能にない、ということがあったりしませんか?
漢方はひとりひとりのタイプ(証)に合わせ、その症状がどこ(気血水)にあるのか、で治療法の方向を決めるので、同じ症状であっても人によって違う薬が処方されたり、過去にはこの薬で効いたのに、今は効かなかった、ということも。ここでは漢方の考え方を少しだけ説明いたします。
基本の体質を知ることです。実証タイプと虚証タイプ、その中間の中間証タイプ、ということになりますが、人間のタイプを3個に分類するというのは難しいのでぼんやりとこの辺りに属する、ようなイメージで捉えていただければと思います。女性はライフステージで体質が変わったり、年齢によっても変化したりします。証もその時々で変化するのです。
虚証
実証
漢方治療をする上で、どこに異常があるのか考える方法として「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」があります。
婦人科でよくみられる症状をあげてみます。
気:エネルギー
気は気分の気
気分上々・気分が下がる・やる気が出る・やる気が出ない色々な時に使う「気」のイメージです。
免疫力や活動力、からだに温かさをもたらします。
状態 | 説明 | 症状 |
---|---|---|
気虚 | エネルギー(気)が不足している状態 | 疲れやすい、風邪をひきやすい、お腹をこわしやすい など |
気逆 | エネルギー(気)がのぼっている状態 | 冷えのぼせ(上半身はほてり、下半身は冷える)、イライラする、不安な感じがする、動悸がする、咳がでる、頭痛がする、めまい |
気滞 | エネルギー(気)が滞っている状態 | 落ち込む、喉のつかえ、お腹のはった感じ |
血:血液
体を流れる血
からだに栄養を届け、からだの機能を高めます。
婦人科では『血の道症』が重要です。月経不順や更年期障害などが、血の道症と考えられ、『血』の異常と考えられています。
状態 | 説明 | 症状 |
---|---|---|
血虚 | 血の量、質が低下している状態(西洋医学的な貧血は必ずしも伴いません) | 月経不順、月経の血が少ない、皮膚のかさつき、髪のつやがない、抜け毛が多い、便秘がち、疲労感、眠りが浅い、こむらがえり など |
瘀血(おけつ) | 血の流れが滞っている状態 | 月経痛、月経時に血の塊がゴロゴロ出る、肩こり、頭痛、目の下にくまができやすい、色素沈着 など |
水:血液以外のからだの液
津(しん)と呼ばれることもある
うるおいをもたらし、代謝や免疫に関係します。
状態 | 説明 | 症状 |
---|---|---|
津虚 | 水が足りない状態 | 腟の渇き、肌の乾燥、尿量が少ない、便秘がち |
水滞(陰虚) | 水の流れが悪い、滞っている状態 | 気圧に起因する頭痛、めまい、むくみ、立ちくらみ、胃のむかつき、関節痛 |
当院では上記を踏まえ症状に合わせて処方させていただきます。
漢方治療は非常に効果が高く、日常生活にも取り入れやすいものです。どこを受診してもなかなかよくならないような症状がある時、お気軽に相談してください。
動悸がある、むくみがある、息切れがある、関節痛がなどの症状がある場合、内科的、整形外科、耳鼻科などの他科の病気が隠れているときがあります。まずは西洋医学的なチェックをおすすめいたします。西洋医学的な治療と併用できるのも漢方治療のよいところです。片方のみに拘らず、柔軟に治療をすすめることをおすすめします。
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