2025年3月19日

はじめに
最近、話題の書籍『子育て漢方』(東洋医学の視点から子育てと女性の心身を見つめ直す一冊)を読みました。『子育て漢方』の著者 鈴村水鳥先生は私の大学の同級生であり、漢方診療にたくさんの学びをくださる先生です。鈴村先生は小児科医ですが、漢方医として様々な患者さんを診療されており、守備範囲は全人、といったところでしょうか。この本はそんな先生の漢方への向き合い方、考え方について網羅的にわかりやすく説明されています。医師向けではありますが、医療従事者のみならず、患者さんの目線にも立っているような、そんな本です。心身をあらゆる角度からよくみてあげることで、生き生きと過ごせるような状態に戻してあげる、ということが私の漢方処方の治療目標なのですが・・・、忙しくしていると、そもそも元のベストな自分はどんな感じだったのか、と見失うようなことは少なくないのでは?
私を含め、日々忙しくされている方は多いはず。気づくと疲労していることにすら気付かないことも、ありますよね?
つい数日前の話ですが、大谷選手の試合が楽しみで、エキサイティングしながら応援していたのに、気づいたら座ったまま寝ていたこともありました。見逃してガッカリ・・と同時に、え?なんか疲れてる?と思った次第です。
話は少しそれましたが・・『子育て漢方』は改めて東洋医学の視点が心と身体のバランスを整える大切さを教えてくれる内容でした。
漢方の視点がもたらす 「気づき」
本書は、子育て中の不調やイライラ、漠然とした疲労感を「気・血・水」のバランスから読み解き、母親の心身に寄り添う漢方的アプローチを丁寧に紹介しています。子育て中の様々なフェーズを切り口に不調の改善への処方を解説しています。
とりわけ印象的だったのは、“不調を我慢しすぎてしまう女性たち”へのやさしいまなざし。
医師として多くの患者さんと向き合ってきた私にとっても、「不調は自覚できるほど明確でなくても、確実に身体にはサインが出ている」という視点は、改めて大きな気づきでした。
自身の体験:加味逍遙散の効果に驚いて
実は、先日外来中にもうれつに肩こり、と倦怠感を感じ、試しに加味逍遙散を内服したところ、驚くほど早く肩こりが改善し、体が軽くなりました。
これまで自分自身には“メンタル不調”という感覚はあまりなく、「元気に働けている=問題なし」と思い込んでいた節がありました。しかし、加味逍遙散の効果を体感して初めて、「気づかぬうちに心身に負荷がかかっていたのだ」と腑に落ちました。
忙しい現代女性にこそ、「気づき」と「ケア」を
加味逍遙散は、まさに“無意識のストレス”をやさしく解きほぐしてくれる処方だと感じました。
『子育て漢方』は、母親という役割に追われ、自分の不調を後回しにしがちな現代女性に、「まず自分を整えることの大切さ」を静かに、しかし確かに伝えてくれる一冊です。
おわりに
日々、患者さんのケアに全力を注いでいる私たち医療従事者も、気づかぬうちに心身のバランスを崩していることがあります。
『子育て漢方』と加味逍遙散は、私自身が“ケアする側”でありながら“ケアされる側”にもなりうることを教えてくれました。
もっと多くの方に、この視点と優しいケアが届きますように。
子育て漢方 鈴村先生の著書はこちらです。